PXL_20230205_011809530

久しぶりにニャンの写真を撮ったのでアップ
まだ寒いけど、だからこそ日当たりが良い場所での~んびり
気持ちよさそうね

1.目次
  1. 目次
  2. きっかけ
  3. 発見したこと
  4. 本当に淨山寺の位置を特定できるか?
  5. 出会い
  6. 使った理論
  7. 終わりに
  8. おまけ
2.きっかけ
 この話を書くきっかけは10年以上前にある小説を読んだことから始まります。平安時代の僧、円仁(えんにん)が作ったお寺、淨山寺というお寺があります。このお寺が実は特別な意味を持つお寺で、このお寺が江戸城(現在の皇居)の真北にあり、そしてさらにその真北、男鹿半島にはこちらも円仁が建てたと言われる赤神神社という神社がある。だから江戸城はここにできたし、歴代将軍はそれを知っていたから大事にしたんだと。そんなお話でした。

 へぇ~と思って、何の気なしに、GoogleEarthを使って確かめてみたのが下の画像


 google_earth_01

 確かに南北ぴったりと言って良い位のラインに乗ってる!すごい!とは思ったものの、その時は世の中にはすごい人がいるんだな…ぐらいにしか思わず、GoogleEarthを閉じました。

 でもその後もなんか気になるんです。なんでこの場所なんだろう…?江戸時代でさえこの辺り(埼玉県越谷市野島)は山鬱密(やまうつみつ)とした場所だったそうで、つまり山深くて周りには人里なんて無さそうなんです。いわんや平安時代においては…不思議だな~と思いつつそれからず~っと思い出しては忘れ、忘れては思い出し、なんでだろう…というのが自分の頭の中にもやもや、もやもやと残っていました。


3.発見したこと
 円仁さんは東日本を中心に沢山のお寺や神社を建てまくったというすごいお坊さんです。その位置を決める時、円仁さんはものすごくラインや位置にこだわっていたんだろうと思いました。なので円仁創建とされるゆかりの場所から淨山寺まで色々線を引いてみましたがなんかしっくりきません。そしてある時、円仁さんは遣唐使で中国に渡り、五台山の金閣寺で修業をした…という事を知りました。なのでGoogleEarthを使って金閣寺(と思われる場所、中国ってGoogleEarthがあまり正確じゃないです)から浄山寺に線を引いてみました。そしたら…


google_earth_02


 変な声が出ました。2,300km以上離れた中国五台山の金閣寺から、日本の埼玉県越谷市の浄山寺までの角度が真東を向いていることが分かったんです。その角度、90.09°誤差0.09°なんてGPSのある現代でも自分は測れる気がしません。しかも当時は西暦700年代。当然GPSは無し、羅針盤すら無し。え、どうやって?偶然にしては出来過ぎてる…よなぁ…と思いましたが、その理屈を説明できる頭はありませんでした。

4.本当に淨山寺の位置を特定できるか?
 それを見つけてからはどうやったら淨山寺をこの位置に持ってこれるのかをずーっと考えてました。答えはあるのですが、途中式が分からない状態。
 わからない要素は以下3つ。
  1. 遠すぎる
    2,300km以上離れているため、たとえ金閣寺から宇宙に向かって光の柱が立ってたとしても見つけられないんじゃないか?という位遠いです。水平線のかなた。そして、埼玉県も五台山も山もあれば森もあれば海もあれば…とお互いに見えるわけはない場所です。

  2. 緯度が分からない
    五台山と淨山寺は同緯度にあるわけではありません。条件は五台山の金閣寺から見て真東にあるという事だけ。たとえ星空を見上げたとしても、同緯度で無ければ同じ星空にならないんです。北極星も角度がずれます。星空を見て、これだけずれたこの位置が正しい位置だと分かるのだろうか?分かるならなおさらその理由が説明できないんです。

  3. 淨山寺から五台山の方角が分からない
    地球が丸いため、五台山から見た真東は、淨山寺の位置から見た真西ではないです。そのため、淨山寺の位置に立ったとして、その位置が五台山から見て真東であるか、なんてわかりません。検証のしようが無いんです。
5.出会い
 1.ピタゴラスの余弦定理
 思い出してはまた忘れ…ぼーっと考えて数年経ちました。そんな中、まず出会ったのがピタゴラスの球面余弦定理でした。
 356px-RechtwKugeldreieck.svg
画像はWikipedia 球面三角法より

 おぉ!すごい!球体状の三角形の角度や線の長さが分かるらしいぞ!だったら書いてみよう!と今わかっていることをプロットしてみました。

google_earth_03
今わかっていることを描いてみた図

 "?"が多すぎる…どうやっても当時円仁さんが計測できたことは∠Cの直角(真東)と、∠aの52°(北極星から算出した北緯38°を90°から引く)ぐらいしかありません。三角を確定するには一辺とその両端の2角、もしくは2辺とその間の角ぐらいは分かってないと絶対に算出できない…

 足りないことが多すぎる…という事でどこならわかりそうか…と探して経度の差を見つけるにはどうしたらいいか考えました。朝日の昇る時間を基準にしようと思っても、それでは経度のずれはわかりません。時計なんてありませんから。平安時代は漏刻時計というものがあったらしいけど…そんなもの持ち運べるわけないし…持ち運べる時計が開発されたのは16世紀頃、だから五台山とどれだけずれているかなんて分かりません。

 2.月食カレンダー
 またもやぐるぐると考えては頭の中でダメだしをする日々…そんな中出会ったのがNASAの月食カレンダーでした。

 そうだ!月食だったら中国と日本で起こるタイミングは一緒だ!後はそのずれを確認すればいいんだ!とひらめきました。中国の月食のタイミングを知るのは簡単…ではないと思いますができないことではありません。822年に中国で採用された暦に宣命歴(せんみょうれき)というものがあります。中国では71年ほど使って終わったようですが、日本ではその後823年もの間使い続けられた暦です。当時、暦の重要な役割の一つに、日食、月食の予報があります。円仁さんが入唐したのが838年、帰ってきたのが847年まさに中国に渡った時は出来立てほやほやの暦でした。

 中国基準で月食の予報を作って、月食のタイミングを見れば経度のずれが分かるんじゃないか!?そう考えて実際に先ほどの月食カレンダーで見てみると月食の発生時間が2時間ほどずれています。つまり月の位置が2時間分早く月食が始まるという事!月は1時間で15度動くのでそこから経度差が正確に分かる!

 NASAのカレンダーを見ると、本当に700年代の月食の回数やその時間まで全部見れるんです。結構頻繁に月食って起こっています。年1回~3回と結構観測するタイミングはあったようです。実用的!

google_earth_04
これで∠Bが分かった!
 
 ここまで分かると球面三角形の公式が使える!そして直角三角形だからちょっと楽になる!
google_earth_05
淨山寺を特定の位置に導くことが出来た!

 淨山寺の緯度特定できて、それが確かに地図上の淨山寺の緯度と一致している!まぁ、計算を端折るために桁数を省略したので精度は悪いです。でも、その位置に導くことが出来た、それが何よりうれしかったです。
 
6.使った理論
 球面三角形の余弦定理
  正弦定理やら正接定理やらあるので使った式が正しく正弦定理か若干自信ないです。これらはピタゴラスの…と付くこともあるようでどうやらその時代にはあった模様。多分に伝説的な人物のため本当にかかわりがあったのか不明。紀元前6世紀にはあった模様

 地動説 
  科学的な地動説は16世紀からですが、これもまたピュタゴラスやそれよりももっと前にさかのぼることのできる考え、紀元前6世紀にはあった模様

 暦
  月食を予報するための暦ですから、そこから月食のタイミングは割り出せる!と判断しました。宣命歴は823年使って明治ごろには2日ずれてたという事で改暦されてしまいますが、逆に言えば823年で2日しかずれない精度の高い暦という事なのでそう考えました。

 緯度・経度
  もともと古代から縦横に区切るという考え自体はあった模様。精度は怪しかったらしいが…。紀元前3世紀~紀元前2世紀頃

 平安時代に生きた円仁さんは少なくとも上に書いてある事は理解し、使っていたんじゃないかと思います。どれも紀元前には考えがあり、それが連綿と受け継がれたと想定すると円仁さんの時代には約千年の時間がたっています。円仁さんの時代から千年未来に飛んでみると約1800年代。人がどれほど進歩したか…と考えると、平安時代にはすごい知識と技術力を備え、ただ、その技術力は秘されたままどこかに消えたのか、今でも誰か、どこかに残っているのか…考えるとわくわくします。

7.終わりに
 ここまで書いておいてなんですが、これはあくまでこれはできるんじゃないか?という私の想像を多分に交えた上での説明でしかありません。実は全然違う方法だったりという可能性もありますし、本当にただの偶然!という可能性はどうしたって消すことが出来ません。(計算やその使い方間違ってますよ…となると頭を抱えますが…)

 ただ、当時のいわゆる宗教家、陰陽師といった方々は最先端科学技術者でもあったらしく、教義の中にこういった世界の秘密を沢山隠しているという話を聞いたことがあります。そんな人たちの秘密の足跡を踏めたんじゃないか、そう思うとロマンを感じるのは私だけでしょうか。自分で探って探って答えらしきものに出会えたのはほんとにうれしいです。

 何より10年以上もやもやしていた思いがすっきりしてとっても気持ちいい!あ~、すっきりした!

 あまりの嬉しさになれない長文ブログを書いてしまう位に嬉しかったです。間違いもあるかと思いますがその場合はコメント頂ければ幸いです。

 ここまで読んで頂いてありがとうございました。

8.おまけ
 他にも見つけた特徴的な位置関係のお寺などを見つけたのでここに挙げておきます。

google_earth_06
グローバルなライン
上から
1.中国 赤山法華院から90°のライン 
  赤山法華院は円仁さんが入唐する際非常に大きな庇護を受けていたそうな
  赤山法華院を起点に90.03°の精度で東京目黒不動尊に到着
  目黒不動尊は円仁が中国に行く前に建てられたとの事なので、関係は怪しいものの…
  ほんとかな~…ちなみに…目黒不動尊は上野の寛永寺と合わせて御所の鬼門、裏鬼門の位置関係。

google_earth_08
偶然かもしれないですが、非常に素晴らしい位置関係


2.中国 普陀山 不肯去観音院から60°のライン
  円仁さんの先輩、慧鍔さんが中国から変える時、大嵐にあって帰れず流れ着いた場所。
  観音様に「まだ何か学び残したことがあったら教えてほしい」と訴えた所晴れて帰れたそうな。
  日光三山の男体山に到着。
  自然物だけにさすがに偶然か?逆算してないか?

3.中国 天台山から60°のライン
  こちらも円仁さんが入唐した目的地の一つ。
  比叡山延暦寺のど真ん中に到着。
  こっちの場合はお堂を建立してそう。

お次は国内のライン
google_earth_07
国内
のライン

 平安京太極殿を起点に45°(つまり鬼門)の方角に伸ばしていくと奥州平泉は毛越寺(もうつうじ、金堂で有名な中尊寺と共に円仁さん創建とのこと)に到着、更にそれを北に延ばすと青森県は恐山の地蔵堂(こちらも円仁さん創建)の側をかすめるライン。280km先の誤差0.5°ってもういいんじゃないかなって思いますが、2,300km先の誤差0.08°を見た後だとなんだかもやっとはします。

 他にもたくさん特徴的なラインはありますが、自分が見つけたのはこの程度。今後はそれぞれのラインの引き方も考えていきたいと思います。

DSC_6392
お風呂の蓋で岩盤浴。
そりゃ気持ちいいでしょうよ。
Bedrock Bathing on the cover of bath tub.
Year, it's good. I envy you.


DSC_5680
猫は家で一番気持ちいい場所を知っていると聞きました。
という事はうちで一番気持ちいいのは…トイレ…?

DSC_5672

海辺に出て、残照を眺めるゆったりとした時間
いろんな事がありましたが、こんな時間を持てて幸せでした。

(淡路島/慶野松原海水浴場にて)

↑このページのトップヘ